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親鸞会教義の相対化・8(質疑応答51)

(続きです)

『教学聖典』(1)【問17】

仏教の根幹である因果の道理を書け。

○善因善果
○悪因悪果
○自因自果



親鸞会では、「仏教の根幹=因果の道理」ということで説明されているようですが、

この説明は、例えば『倶舎論』等の通仏教の因果論で言えば、
異熟因・異熟果という一つの因果関係にすぎませんので、
これでもって、「仏教の根幹」と言うのは、あまりにも乱暴だと思います。

また、用語の使い方も仏教学出身の私からしたら問題ありだと思います。


まず「善因善果、悪因悪果」という言い方は、
一般によく知られた言葉なんですが、
本当は「善因楽果、悪因苦果」です。

善の行為が原因になって、好ましい安楽な結果が生じる。
悪の行為が原因になって、好ましからぬ結果が生じる。

ということで、
原因のほうは道徳的に【善いか・悪いか】ですが、
結果のほうはその結果を受ける者にとって【好ましいか・好ましくないか】であって、

道徳的にいえば、それは善でも悪でもない「無記」(中性)です。

だから「善果・悪果」という言い方は、不適切です。

これは細かいようですが、実はすごく大事なことです。

仏教で善・悪を問題にする時は、業(行為)の善・悪であって、
その人の本質が、善・悪ということではありません。

これを忘れて「善因善果、悪因悪果」という言葉を使ってしまうと、

悪い行為が原因になって、悪い結果が生じる。
ということになってしまって、「その人の今のあり方が悪い」
みたいことになってしまいます。

「その人の今のあり方が悪い」ということになってしまったら、
そこから、善因が生じることは決してありませんから、
いつまでたっても業の呪縛から抜け出せなくなってしまいます。

でも、現在「苦」という結果を受けていたとしても、
それ自体は善でも悪でもなくて、「無記」ですから、
そこから、頑張って善の行為をして、「楽」を得ることができるわけです。

この違いが結構大きくて、これをあやまると「悪果」から、
いつまでもいつまでも抜け出せなくなると思います。


それから、業の理論によれば、
過去の行為が現在の自己のあり方を決定していることになりますから、

それは、
「自己のあり方が、すでに過去において動かしがたく与えられたものであって、
 現在に至ってはそれをどうすることもできない。」

という、宿命論的な考え方になってしまって、
この考え方に立つと、現在の自分にとって、向上を求めて努力することの意義が、
まったくないことになってしまうし、そんな意欲も起こらなくなってしまいます。

ただ、ここで押さえておかなければならないのは、
過去の業が現在の境涯を決定していると同時に、
現在の業は未来の境涯を決定するものであって、
仏教では、この【現在→未来】の方を大事にしているということだと思います。

私たちにとっては、
現在の自分の境涯が過去の自分の行為によって決定されていることに、
心を煩わすよりは、
将来の自分の境涯が現在の自分の行為によって決定されることを思って、
現在の行為を正すことにいそしむことが大切なんです。

だから、この業の思想は、
過去のことを考えて現在を嘆く人には、運命論になっちゃしまいますが、
現在に立って、未来を見つめる人にとっては、
自分自身を励まして、明るい未来を切り開く根拠となると思うんです。



あと、
「業というものが、僕達のあり方のすべてを決定づけているものでない」
ということも、すごく大事だと思います。

因と果の関係は、ただ一種類、人間の行為とその結果とのあいだにだけ成り立っているわけじゃないんです。

たとえば説一切有部では、六因・四縁・五果というように、
ざまざまな種類の因果関係が無数にはたらいて、
瞬間瞬間の人間のあり方を構成していると説明するんですよ。

「善因楽果、悪因苦果」
というのも、実は六因・四縁・五果でいえば、
異熟因・異熟果という一つの因果関係にすぎないのであって、
決して、それが全てではないんです。


それに業の結果として現れたものが、重ねてふたたび新たに業の結果を生むこともないし、
現在行う善・悪の行為が、全部過去の業のもたらした結果であるということも決してないんです。

だから、業の報いというものはある面においては、決して拒否できないものだけど、
それが人生の全面を、全生涯にわたって、決定的に支配することはないんです。


こういうことを踏まえながら、慎重に話をしていかないと、
なんていうか、人間を窮屈にして地獄堕ちの恐怖で支配するような、
とても憂鬱な理論になってしまう気がします。

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